強硬派の関東軍作戦参謀辻政信少佐が起案し、昭和十四年四月二十五日の関東軍兵団長会同で示達されたこの要綱がもたらした各方面への波及効果を検分しよう。要綱は冒頭で「軍は侵さず、侵さしめざる」を本則とするが、国境におけるソ蒙軍の不法行為(越境等)は「周到なる準備の下に徹底的に膺懲(ようちょう)」し、その「野望を初頭に於て封殺破摧(はさい)」する方針を宣言している。
全体に流れる好戦的姿勢はともかく、第一線の兵団長に国境の認定権を委ねたうえ、越境を意味する「一時的にソ(蒙)領に進入」(第三項)するのも容認したのは、天皇大権を犯しかねない越軌と見られてもしかたがない。
『明と暗のノモンハン戦史』
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