「飛行士!やられたタンクは、右か左か?」
とどなった。
被弾部は翼のつけ根付近で、左右どちらか判定にしばらく時間がかかったが、どうやら右タンクとわかった。
すると隊長は、燃料コックを切り換えて被弾した右タンクがカラになるまで右タンクの燃料を使い、右タンクがカラになってはじめて左タンクに切り換えた。
このわずかの間にも、彼我の激烈な空戦がつづいたが、零戦の奮戦によって敵グラマンはつぎつぎと撃墜され、約十五分後には空中に敵機を一機も認めなくなった。
彼我空戦の死闘の間にあって、適切な回避運動や燃料コックの切り換えを実施した隊長に対し私は、先輩にはとてもおよぶところではない、と感心するとともに教えられもしたのである。(元空母「飛龍」艦攻隊第二小隊長・海軍大尉 橋本敏男氏)
『証言・ミッドウェー海戦』
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。