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2017年12月28日木曜日

町は火の海と化し、私は山の中の洞窟に潜んだ。

五月に生まれたばかりの子どもは泣きやまない。そこへ兵士が来て言った。「子どもの泣き声がアメリカ兵に聞こえたらどうする。今度泣いたら刺し殺すぞ」(サイパン島での沖縄出身の民間人女性の手記)
『最後の言葉』

日本艦隊の連射は一層激しさを加え、

戦艦「オスラビア」についで、遂にロジェストヴェンスキー司令長官坐乗の旗艦「クニャージ・スヴォーロフ」にも火災が発生した。しかも、同艦の舵機の汽罐に砲弾が命中、航行の自由を失って速度もおとろえ、艦列外に出ざるを得なかった。
旗艦の落伍によって戦艦「アレクサンドル三世」が先頭艦となったが、同艦にも砲弾が集中、マストは吹き飛び煙突は倒壊して、火炎が噴き上った。
『海の史劇』

T字戦法をとった日本艦隊に、ロシア艦隊は進路前方をさえぎられた形になり、

ロジェストヴェンスキー司令長官は右舷方向への変針を命じた。
それを認めた東郷司令長官は、旗艦「三笠」以下に変針を命じ、ロシア艦隊の進路前方にのしかかるように航進させた。その間、両艦隊の砲撃は絶え間なくつづけられ、殊に、先頭をゆく艦には砲撃が集中した。
『海の史劇』

幕僚たちは、東郷(平八郎)を不安そうに凝視していたが、

突然、東郷の右手が高くあげられるのを見た。
幕僚たちは、息をのんで東郷の命令を待った。そして、東郷の右手をみつめたが、その手が勢い良く左へ振り下ろされた。幕僚たちは、すぐにその意味をさとり、唖然とした。東郷は、左舷方向に回頭して敵艦隊に突進しようというのだ。
加藤(友三郎)参謀長が、「三笠」艦長意地知大佐に、
「艦長、取舵一杯だ」
と、言った。
『海の史劇』

「信濃丸」の電信兵は、

「敵ノ艦隊、二〇三地点ニ見ユ」
と、暗号電文のキーをたたいた。……時刻は、午前四時四十五分であった。
『海の史劇』



2017年12月22日金曜日

日本側に甘さ

(モンゴル東部の)大平原に残る巨大基地(サンベース、マタット、及びタムスク)と軍用鉄道の跡を見ると、中立条約を結び、対独戦の最中にあってすら日本を敵視して隙を見せなかったソ連の国家的な意志を改めて感じた。日本の首脳陣は、当初は演習の名目で対ソ攻略を企てながら、敗色が濃くなると和平仲介を求めようとした。スターリンの決意の強さと、日本側の見通しの甘さとの隔たりに愕然とする。(「ソ連が満州に侵攻した夏」の著書がある作家半藤一利氏)

「『お国のために』という言葉のもとに、

まともに物を考えることを封じられている時代だったからね」(故水木しげるさん)

2017年12月18日月曜日

特攻隊として出撃の日が近かったのだろう。

母子は玄関や座敷で火鉢を囲んだ。母親たちは故郷から持ってきたスルメや空豆を「今度の休みに息子に食べさせて」と母に託していた。
(45年)3月に入って少年兵3人が「明日発ちます」とあいさつに来た。母は「お国のためにがんばってください」と見送ったが、「もうあの人たちは亡くならはるんやで」と私にささやき、彼らの後ろ姿をいつまでも見守っていた。(玉木隆子さん)
――『声  語りつぐ戦争』より

昭和十年代の軍事指導者らは

自分に都合の悪いことが生じたとき、箝口令(かんこうれい)と戦死の二大命令を兵士たちに強要するのが特徴であった。(保阪正康氏)
――『ナショナリズムの昭和』より

2017年12月17日日曜日

「(まず雷撃隊は全滅するだろうな。

おそらくいちばん先に靖国神社へ行くことになるだろう)そんなことを考えながら隊員たちの顔を見わたすと、気のせいかだれもが真剣そのものの表情をしている」(蒼龍雷撃隊員森拾三二飛曹の手記)
『真珠湾攻撃作戦』

2017年12月14日木曜日

「稚内公園」からは海を一望できる。

「南極観測樺太犬訓練記念碑」や「樺太犬供養塔」のほか、市のシンボルといえる「氷雪の門」がある。かつて多くの日本人が暮らしていた樺太への望郷の念と、戦中・戦後に現地で亡くなった人たちの慰霊のために建てられた。近くには、1945年8月に真岡(現ホルムスク)の郵便局で集団自決した女性電話交換手を悼む慰霊碑「九人の乙女の碑」もある。
――『映画の旅人』より

氷雪の門

九人の乙女の碑

2017年12月12日火曜日

歴史を学ぶということは、

ただ、過去のできごとを知るということではありません。歴史からひきだされるさまざまな教訓は、現代での生き方を教え、あわせて、未来への示唆を与えてくれるものです。
『物語日本史』


2017年12月10日日曜日

武蔵は魚雷と爆撃の猛攻に沈んだ。

山城は巨大な火柱を夜空に噴き上げて消えたという。4日間で7千人とも1万人とも言われる将兵が命を落とした。作家の半藤一利氏は「大日本帝国の最終章を飾る雄大な葬送賦」と評した(『レイテ沖海戦』)
――『天声人語』2017年(平成29年)12月10日より