「三一師団の佐藤の野郎は、食うものがない、撃つ弾がない、これでは戦争ができないというような電報をよこす。日本軍というのは神兵だ。神兵というのは、食わず、飲まず、弾がなくても戦うもんだ。それが皇軍だ。それを泣き事言ってくるとは何事だ。弾がなくなったら手で殴れ、手がなくなったら足で蹴れ、足がなくなったら歯でかみついていけ!……」
長広舌を聞くうちに、将校たちはフラフラになり、バタバタとその場に倒れたという。
『責任なき戦場』
補任課は以前は各方面の人が入れ替っていたが、近ごろは一種の人事屋なるものができ上り、しかも狭い視野で独善的に人事をきめる癖があった。所轄人事の一元化で無理をした結果、歩兵の将校で精々士官学校の区隊長くらいの経験しかないものが各方面の人事の専権を振うようになった。軍の能率をこれがために阻害したことは幾何(いくばく)なるかを知らない。
『昭和戦争史の証言 日本陸軍終焉の真実』