人間は決してあのように死んではならない
石原吉郎
下半身は俯(うつむ)けになっているのに上半身は仰向いている。シベリアの強制収容所で、事故で命を失い、営倉に投げ込まれてねじ切れた捕虜仲間の姿に、詩人は、死した後も人がまるで物のように屍体(したい)の一つとして処理される、という形でもう一度殺されるのを見る。そして、大量に殺戮されることよりも「ひとりひとりの死がない」ことに戦慄する。評論集『日常への強制』から。
――『折々のことば』より
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