理性的に戦争を見てきた軍人らしく、いまはメッケル少将の研究に没頭している。白髪、七十二歳の学究は回想する。
《阿南大臣が自決された直後、東久邇(ひがしくに)内閣の陸相に決った下村定大将をお迎えに私は北京へ飛んだ。そのとき私は下村さんに「阿南さんの態度が最後まであいまいだったのは残念です。クーデターを計画して気負いたつ将校たちに対して、阿南さんが初めから計画をはっきり否定していたら、宮城事件のような不祥事は起らなかっただろう……と私には思われます」といったことを覚えている。(……)》
『一死、大罪を謝す』
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