(明野飛行場の)格納庫の中には息詰まるような空気が充満していました。そして菅原中将は驚くべき言葉を続けたのです。
「ただし、特殊任務を遂行する以上、絶対に生還はできない」
あたりは静まりかえり、物音ひとつしませんでした。そんな緊張感のなかで全員に一枚の紙が配られたのです。週刊誌ぐらいの大きさの紙で、右端には特殊任務と大きく書かれ、紙の中央部分に文字が三列にわたって並んでいました。
「熱望する
希望する
希望せず」
菅原中将の退席後、同行していた副官が言葉を継ぎます。
「この紙に官姓名を署名し、いずれかに丸をして、夕食までに提出せよ」
『特攻隊振武寮 証言 帰還兵は地獄を見た』
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。