鹿屋基地から七二一空(神雷部隊)の一式陸攻十八機が、零戦三十機に援護されて出撃した。陸攻のうち十五機は、機体の腹に人間爆弾「桜花」を抱いていて、これが「桜花」の初出撃だった。
陸攻隊指揮官の野中五郎少佐は隊員たちに、
「戦わんかな最後の血の一滴まで、太平洋を血の海たらしめよ」
と訓示すると、乗機に向かって歩いていった。
機首に一・二トンもの爆薬を仕込んだ桜花を抱いた陸攻は、見るからに重そうにゆっくりと上昇していった。
「飛ぶのがやっとじゃないか。これで敵艦隊まで辿りつけるのか」
野中隊は、途中で待ち構えた敵戦闘機に陸攻全機が撃墜され、攻撃は失敗に終った。
野中が出撃前夜に、
「ろくに戦闘機もない状況ではまず成功しないよ。特攻なんてぶっ潰してくれ」
という言葉を遺していたことを進藤が知るのは、戦後になってからのことである。
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