きわめて危険だ。太平洋戦争が始まる頃、陸軍省軍務課長の地位にあった佐藤賢了は東條(英機)のマグの一人だった。
「兵隊がガムをかんでいたり、上官に口答えしたりしているアメリカ陸軍は軍隊の体をなしていない。皇国精神にあふれているわが皇軍とは、その精神力で比較にならない」
こんな雑駁(ざつぱく)な佐藤のアメリカ観を鵜呑みにして、東條は戦争に踏み切ったのである。もう一人のマグで、東條の下で陸軍次官を務め、「東條の腰巾着」と言われた富永恭次は、部下に特攻を命じておきながら、自分はフィリピンから敵前逃亡している。
軍官僚は権力を私物化して、気に入らない人物は懲罰的に前線へ送りこみ、自分たちに連なる人脈は決して激戦地には送らなかった。
『官僚亡国 軍部と霞が関エリート、失敗の本質』
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