そして(『昭和史発掘』の)終章では、皇道派の重鎮とされていた真崎甚三郎にふれる。その判決文を紹介しながら無罪になる意味を具体的に解きほぐしている。この判決文のおかしさは、真崎の被告としての犯罪行為を次々に指摘していき、さらに他の証拠もあってこれを認めるのに困難ではないとしながら、結論として次のようになるというのだ。そのことを松本(清張)は鋭く突いている。
《……然ルニコレガ叛乱者ヲ利セムトスルノ意思ヨリ出デタル行為ナリト認定スベキ証憑(しょうひょう)十分ナラズ。結局本件ハ犯罪ノ証明ナキニ帰スルヲ以テ、陸軍軍法会議法第四百三条ニヨリ、無罪ノ言渡ヲナスベキモノトス》
主文は「被告人真崎甚三郎ハ無罪」である。
『松本清張と昭和史』
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