陸攻隊は左に九◯度変針して爆撃進路に入った。前下方に飛行場が見える。
そのうちに、ものすごい対空砲火が、われわれをすっぽり包んでしまった。
しかし、陸攻隊はこの無数の黒煙のなかを、整然たる隊形で微動だにせず進んでいく。われわれはその六◯◯メートル上空を、陸攻隊をかばうようにして進んだ。
やがて爆弾が一斉に投下された。その瞬間、右側にいた一式陸攻一機がエンジンから黒煙を吐き出した。黒煙はますます長く太くなっていく。対空砲火にやられたのだ。しだいに戦列から離れ、右方へ降下しながら、海岸に碇泊中の艦船を狙っているように身受けられる。生きることを断念し、体当たりを決意したのだろう。悲愴感が背筋を走る。
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