柱島沖の帷幄の中で作戦を構想する者と、実戦者との心構えの相違…
ミッドウェー島の占領と敵機動部隊の両方にあたれという作戦が気に入らなかった。いやしくも作戦の先陣をうけたまわるのは機動部隊であるから、作戦の仕振りについてはこちらの意見を聞いてもよかろうと、幕僚たちはいきり立ったのである。
それに何よりも全搭乗員が疲労している。
南雲の腹の中には、これまでの南方作戦での指揮と戦果が自信となって、うぬぼれと驕慢心がなくもなかった。それにハワイ作戦での一撃離脱について、山本が批判的な言葉を弄したことも、南雲の耳に入っていた。これがカチンときていた。
さて、ミッドウェーにおける南雲は、あまりにも大胆すぎた。というより、状況判断の不徹底が四空母壊滅の原因になった。
敵機動部隊を発見した南雲機動部隊では、攻撃機の兵装を再度とりかえるという、あまりにも有名なロスをくり返した経緯があるが、問題となるのは、それ以後の南雲の戦闘指揮である。
山口司令官が二航戦(蒼龍、飛龍)の艦爆の兵装転換が早く終わったので、南雲長官に二航戦の艦爆隊だけでも攻撃に発進させるべきだと意見具申した。
ところが、南雲は山口の意見を無視、返事もしなかった。
状況判断は、指揮官の最も重要な責務である。そのためには、いかなる情報も無視してはならないし、部下の進言を軽んじてはならない。繊細な観察と、怜悧な分析力と、チャンスには勇断をもって当たる決断が要求されるものである。そこに指揮官の資質が重大な要素として問われるゆえんがある。
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