をかかげているが、眼鏡でとらえたところでは清国陸軍の将兵を満載していることがわかった。
「ただちにとまれ。ただちに投錨せよ」
と、浪速は信号をあげた。
浪速の艦長は大佐東郷平八郎であった。
かれは英国船長に対し、
「その船をすてよ」
と、信号で命じた。
ところが高陞号の船内は騒然としており清国兵は船長以下をおどし、下船させなかった。東郷はこの間の交渉に二時間半もかけたあげく、マストに危険をしらせる赤旗をかかげ、そのあと、撃沈の命令をくだした。浪速は水雷を発射し、ついで砲撃した。
高陞号はしずんだ。
船長以下船員はことごとく救助されたが、清国兵はほとんど溺死した。
この事件はすぐ上海電報によって英国に打電され、最初の報道はきわめて簡単であったために英国の朝野を激昂させたが、やがて詳細がわかるにつれて浪速艦長東郷平八郎のとった処置は国際法にてらしてことごとく合法であることがわかった。
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