たった一人親英米の腰抜けとされていた山本をかばった人であった。山本の紹介状をもらって中国へ出かけた折、笹川は南京で、総軍の参謀をしていた辻政信に威勢のいい話を聞かされたことがあった。辻が、汪政権の顧問役の、のちの大東亜大臣青木一男と口論になり、ぐずぐず言ったらぶった切ると軍刀をがちゃつかせたら、青木が青くなって逃げて行った、弱い奴だと、辻が笑っていたという話である。
「それで、その時青木は、武器は何を持っとったんや?」
と笹川は聞いた。
「で、青木が丸腰で、あんたの方は、何を持ってた?」
「軍刀とピストル持ってる人間が、丸腰の人間脅したら、相手が青うなって逃げて行くのはあたり前で、そりゃ、あんたの方がよっぽど弱虫やないか」
と彼は辻に言った。
山本は笹川が笹川流の一種の是々非々で、誰にでもこういう風に思ったことを言う点、それから、航空に強い関心を持っている点を買っていたらしい。
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