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2018年11月10日土曜日

「弓がそんな山のなかで押えられているのは、

トンザンで敵を逃したからだ。トンザンにいた敵が、その辺を固めてしまったのだ。トンザンで包囲しながら、殲滅しそこなったのは、師団長がやる気がなかったからだ。トンザンで殲滅していたら、今ごろは、なんなくインパールにはいれた。師団長はトンザンでは敵を逃す。そのあと、追撃を命じたのに、ぐずぐずしておって、前進をせん。師団長は戦さが恐しくて、前進できなかったのだろう。敵を助けて、見方を不利にしたのは、利敵行為だ。少しは恥を知れ、卑怯者」
柳田師団長の青ざめた顔に、汗が光っていた。不当な侮辱にたえがたい思いだった。親補職の師団長がののしられているのは、いかにも無残であった。見るにしのびない思いで、その場を離れる将校もいた。
『インパール』

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