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2016年8月13日土曜日

ややあって、駆逐艦の航跡が急に白く

波立ちはじめた。「飛龍」にむけて増速し、そして急に変針した。
「さては自沈のための魚雷発射では?」
私はまばたきもせず、じっと見守っていると、「飛龍」の舷側に巨大な水柱があがった。
その水柱は、テレビなどで見るスローモーション画面のように、おもむろに高く高く上昇して、いったん停止し、そして静かに消えていった。
昨夜来の乗員の苦闘にもかかわらず、「飛龍」はついに刀折れ矢つき、自沈のやむなきにいたったものと思われる。生存者を駆逐艦に移し終わってからの魚雷発射だったのである。(元重巡「筑摩」掌飛行長・海軍大尉 福岡政治氏)
『証言・ミッドウェー海戦』


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