ページ

2013年10月8日火曜日

戦訓4 ― 待ちぼうけの潜水艦隊

ハワイ作戦では、連合艦隊はまず真っ先に潜水艦部隊を出撃させていた。
いよいよ開戦となり、先端が開かれたあとの真珠湾付近は、駆潜艇や駆逐艦によるじつに厳重な警戒が敷かれ、港外に潜伏’していた日本潜水艦はうっかり頭も出せないほどであった。
そこで昼間は深度三〇メートルから五〇メートルのところに潜航、または海底に着底していて、水中聴音機で敵艦のスクリュー音をさぐることにした。
ところが、いくら待機していても敵艦のスクリュー音はまったく聞こえなかった。
てっきり敵艦は付近海面を通っていないのだろうと考えていたのだが、事実は、潜伏している日本潜水艦の頭上を堂々と、しかもひっきりなしに水上艦艇が通過していたのである。
そのなかには、日本軍が血眼になってさがしていた航空母艦が、毎日のように、真珠湾を出たり入ったりしていたのである。
それなのに、なぜスクリュー音が海中の潜水艦に聞こえなかったのか?

一般に真夏は海水の表層温度が高くなって、下層との間に水温差が生じる。この温度差の境い目で音が屈折して垂直に下方に向かう。だから温度の低い下層域に潜んでいるとスクリュー音は近い距離(一〇〇〇メートル)でもまったく聞こえない。
また、冬は逆に表層温度が下がるので、浅い冷水層にいると、遠い距離(一〇カイリ以上)でも、音は水平に伝わって聞こえるが、逆に深度を深くとって温度の高い温水層に潜んでいると、音は温水層のところで上に反射してしまうので、敵艦が頭の上を通っても、音はまったく聞こえない。
日本の近海では温度差がそれほど激しくないせいか、訓練時に音を捕捉できなかったという例はなかった。ところが、実際には訓練方法に問題があったのである。
平時訓練と実戦とは、まったく違った状況になることを教えてくれる教訓である。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。