『孫子』の作戦篇の一節。
「兵聞拙速未観巧之久也」
兵には拙速を聞くも、いまだ巧久をみざるなり。
ここでの”兵”は戦争を意味する。戦争になったら、たとえ戦い方が拙劣であっても、一日も早く切り上げて終止符を打ったほうがよい。戦い方が巧妙でも、長期戦に持ちこんで勝ちを得たという例はみたことがない。
戦闘に勝つための戦法として、日本軍は速戦即決を標語に用いたほどだが、これはむしろ中国の晋の正史である『晋書』の一節によっている。
「巧遅不如拙速」
巧遅は拙速に如かず。
つまり、巧みで遅いよりは下手でも速いほうが勝ちをしめる、との意味である。
作戦としての拙速戦法は、当初から計画しておくというものではない。これはあくまで咄嗟の戦術であり、いわば窮余の一策として指揮官のインスピレーションから発生するものである。
これには指揮官の絶妙な決断が必要であり、敵の虚をつくタイミングがぴたりと合っていなければならない。
一方で、拙速戦法は、成功すれば大きな戦果が得られるが、万一、タイミングを間違えると大損害をこうむるおそれがあることも心得ておかなければならない。
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