勝つための条件で大切なものに、部下の将兵をいかに掌握するかという、指揮官の人間的な器量の問題がある。
艦艇の場合、全乗員の上下の心が一致するのは、やはり駆逐艦や潜水艦、海防艦、駆潜艇といった小艦艇の場合が多い。
駆逐艦の乗員は約一五〇人から二三〇人。それが狭い艦内で肩をすり寄せて同居している。ここでは階級の上下は問題ではない。むしろ親兄弟のような人間関係ができあがっていた。
一隻の駆逐艦は、艦長を親分とした”次郎長一家”である。艦長と乗員の人間関係がこまやかで信頼関係が深くなければ、総員が一丸となって敵にあたる心意気は生まれてこない。
艦長の、人の心を己れの心とする思いやりが、たくまざる部下掌握の要諦になる。
艦長以下の一致団結した乗員たちの結束力が、劣勢を勝利に導く。
階級の垣をこえて部下の心の中にストレートに飛び込んで来る艦長の人柄に乗員たちの顔が輝く。
死ぬも生きるも艦長の胸三寸に託されている船乗りたちだからである。
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