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2013年10月19日土曜日

日本軍隊用語集 ― 赤紙(共)

赤紙(あかがみ)

個人の意志に関係なく兵役を国民の義務とする徴兵制は、今では時代おくれの奴隷制度のようにみえるが、十九世紀から二〇世紀にかけての先進国はすべて徴兵制をしいていたので明治の軍隊も自然にそれに習った。
ひとたび戦争が突発すると兵隊を増やす動員がかかり、予備役・補充兵(徴兵検査乙種合格以下)たちに呼び出しがかかる。このときに役場の兵事係が自転車に乗って配って歩く呼出状が赤紙である。
正式には「臨時(充員)召集令状」であり、召集令状とも呼ばれたが、実際は赤色ではなくピンク色であった。
赤紙には「右臨時召集ヲ命セラル 依テ左記日時到着地に参着シ此ノ令状ヲ以テ当該召集事務所ニ届出ヅベシ」と印刷され、日時・場所・部隊名がペン書きされてある。入隊者は晴れ着に着替え、この令状を持って家族や近所の者に見送られて出て行くわけだが、それが一生の見納めとなることもしばしばだった。
当時、郵便ハガキ代は一銭五厘であったため、ハガキで呼び出しがあったような通説もあるが、赤紙はあくまでも役所の兵事係の手によって本人や家族に手渡され受領印をもらう厳格なもので、この令状を受け取った本籍地の家族が転居や旅行先の本人に通知したハガキからの伝説化であろう。
騎兵隊や砲兵隊で軍馬の重要さを教育する下士官が「お前らは一銭五厘でいくらでも集められるが、お馬さまはそうはいかねえ」とハッパをかけるのもこのあたりからである。

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