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2013年11月2日土曜日

戦訓13 ― 偽電にひっかかる

緒戦当時、アメリカの情報収集能力や暗号解読の技術は、日本側が考えていた以上にすぐれたものがあった。
昭和十七年四月の初旬ころ、南方作戦を終えた日本艦隊が、本土に集結するらしいとの情報を米軍は入手した。
つまり四月五日にミッドウェー作戦が正式決定した直後、早くも米軍は日本海軍の行動変化をキャッチしているのである。
四月末ごろから、ハワイの情報隊は、日本海軍の暗号電報をキャッチして、断片的に解読していた。
その後、暗号解読が進むにつれて、日本軍の企図している作戦の輪郭がぼんやりと浮かび上がってきた。暗号の中にAFという符号がだんだん多くなってきた。
情報隊は古い資料などを調査して、これはミッドウェーを指している公算が大きいと判断した。また暗号のなかにAQ、AOBなどの符号があった。情報部は、これはアリューシャン方面の島を指しているのではないかと推測した。この判断は正しく、日本軍はAQをアッツ島、AOBはキスカ島を指す符号として用いていた。
いまや日本軍の進攻目標を解明することが急務となった情報部では、ミッドウェーにまちがいなかろうと判断はしていたが、これを確認するためにニミッツ大将の承認を得て、日本軍にオトリの偽電を送り込む計略を実施した。五月十一日、ミッドウェーの守備隊長は、情報部の計画にしたがって、
「真水蒸留装置が故障、飲料水不足中」
とハワイの司令部宛に平文で発信した。これに対して司令部は、同じく平文電報で、真水をバージ船で送るむねを回答した。
情報部は、この偽電が日本軍にどう伝わるか、固唾を飲んで待ちかまえた。二日後の十三日、
「AFは真水が欠乏している」
と通報する日本軍の暗号電文が解読されたのである。計略はみごとに成功した。これで進攻目標がミッドウェーであると断定できたのであった。
ついで情報部は、日本軍の攻撃開始日を解読することに成功、手の内を見破られた日本機動部隊は、やがて大敗北を味わうことになるのである。

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