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2014年11月24日月曜日

「ほどなく安藤中隊長が来た。

夫人もどこからか現れ、倒れた(鈴木)侍従長の側に正坐して微動だもしなかった。その夫人の姿は、三十年後の今日でも忘れることが出来ない。実に立派な態度だった。
安藤中隊長は夫人に向かって、
『麻布歩兵第三連隊第六中隊長、安藤輝三』
と名乗った。襲撃理由は、昭和維新断行のため、とだけいった。
夫人は何もいわず正坐をつづけていた。
しばらくすると中隊長は、
『まだ脈がある。武士の掟により閣下にとどめを……』
といった。安藤中隊長は既に軍刀の柄に手をかけていた。正坐していた夫人が初めて口を開いた。
『それだけは私に任せて下さい』
少しも取り乱したところはなかった。
『では、とどめはやめます』
中隊長はそういって立ちあがると、倒れている鈴木侍従長に挙手の礼をした。私たち全員は捧げ銃の礼をとった」(同、奥山元軍曹)
『昭和史発掘』

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